これまで自分が登記申請する上で困ったりした事例を紹介します。こちらも個別事案となる場合がありますので、ご不安な場合は法務局に事前相談をお願いします。
神社に関する登記で一番多いのが代表役員に関する変更登記ではないでしょうか。
登記申請にあたっては、まず就任する神社の規則をみて役員定数や選任規定などがどのように定められているか、包括宗教法人があるかどうか等を確認します。
次に神社の登記事項を確認します。登記情報提供サービスを利用するのが一番お安くなりますが、利用者登録が必要になるのと画面の操作が難しく感じる方もいると思います。そのような時は法務局に行って就任する神社の履歴事項全部証明書をとってみます。現在、履歴事項全部証明書は全国どこの法務局の窓口でもとることができますが、同じ神社名がたくさん登記されていますので、主たる事務所の住所をよく確認してからいきましょう。また現在はインターネットで申し込み郵送で受け取ることができます。簡単な利用者登録をすれば郵送料込み1通500円で登記事項証明書がとられます。詳しくはこちらで。
登記申請ですが、現在地方では法人登記を扱う法務局は1〜2カ所に集約されているので申請先が管轄法務局かどうか確認した方がよいと思います。申請する法務局が遠方にある場合も申請書を郵送して申請することも可能ですが、申請書の調査は法務局で受付けした後になるので、申請書の補正や申請の取下げが必要になる場合があります。その場合は郵送で補正や取下げをすることもできますが、補正内容や取下げの理由を詳しく聞くためにも申請した法務局に出向いた方がよいと思います。
なお、役員変更登記の際には同時に代表役員の印鑑届を提出しますが、印鑑カードの交付は何か事情がない限り後日必要なときに申請することをおすすめします。なぜかというと、代表役員の印鑑証明書をとることは滅多にないので、いざ印鑑証明書を取らなければならないという時にカードがどこにあるかわからない、ということがあるからです。もちろんいつでも使えるようにカードの発行を受けてもよいのですが、くれぐれも管理は厳重に管理しておきましょう。なぜなら前述の紛失を防ぐ意味もありますが、法人の印鑑カードも個人の新刊証明書と同様カードを持っていきさえすれば第三者でも簡単に発行できてしまうからです。また包括宗教法人によっては就任時に法人の印鑑証明書と代表役員印の提出を求めるところもありますので、包括宗教法人の事務局に確認してください。
上記の登記が完了したら神社庁と所轄庁に変更届を提出します。
死亡を証明する書類
前代表役員(代務者)が死亡したことがわかる書類は戸籍(一部事項証明書(戸籍抄本)で構いません)です。死亡の記載がある住民票でも登記は可能ですが、住民票は基本的に住所の証明書で個人の身分を証明するものではないという考え方もありますので、なるべく戸籍をつけた方が無難です。最悪の場合親族からの証明書という方法もありますが、どうしても前記の証明書がとられない場合を除き、この方法はとらない方がよいです。原本は登記完了後返却可能ですので、原本を返してもらいたい場合は、原本とともにコピーをつけ、コピーの末尾の余白に
「原本の写しに相違ありません。○○神社 代表役員 ○○○○」
と記載し、法務局に届出する新代表役員印を押印すれば登記完了後原本が返却されます。
退任・辞任を証明する書類
まず宮司・代表役員辞(退)任届。届の決まった様式はありませんが、いつ、どこの、何神社の宮司・代表役員を辞(退)任するのか、という旨の記載が必要です。届には実印を押して印鑑証明書を付けるか登録していた代表役員印を押印します。
次に宮司職を免ずる辞令。神社庁が発行する証明書もあるときいております。
上記いずれの書類も原本還付可能ですが、辞(退)任届については原本をとっておく意味はあまりないので原本をつける例がほとんどです。
就任を証明する書類
宮司(代表役員)任命書。
神社本庁から発行された代表役員であることの証明書。
いずれも原本還付可能です。
就任承諾書。決まった文例はありません。「何市何番地○○神社の代表役員(代表役員代務者)に選任されたので、その就任を承諾する」旨の記載が必要条件です。日付は実際に就任を承諾した日です。この日が就任日として登記されますので、通常は神社本庁に届け出る書類と日付を合わせる意味で宮司任命書に記載された任命日をもって代表役員就任を承諾することがほとんどです。住所氏名は印鑑証明書のとおり記載します。現在は俗字(いわゆる旧字体)でも登記できる場合が多いのですが、あまり見たことがない字体の場合は登記できる文字かどうか法務局に事前相談しておいた方がいいと思います。押印する印鑑は認印でかまいません。
規則写し
神社本庁に所属する神社では規則に代表役員は宮司職にある者という定めがあるのが普通ですので、規則の定めにより選任されたことを証明するため規則の写しをつけます。原本の提出は不要ですが代表役員として届け出る印鑑で契印し末尾に
「右は○○神社規則の写しである。○○神社 代表役員 ○○○○(代表役員として届け出る印鑑を押印)」と記載し提出します。もし万が一規則に役員の選任方法がない場合は宗教法人法の規定に従い責任役員会を開き責任役員の中から代表役員を選出し、議事録を添付して役員変更をすることになります。
後任宮司の選任が遅れたが裁判所から過料がくるか
宗教法人法上、役員の選任が遅れたことに対する罰則規定はありません。例えば宮司が辞任・死亡したが、なかなか後任宮司が決まらず、選任が一年以上遅れてしまった場合、後任宮司に対して裁判所から過料通知がくることはありません。ただし1年以上代表役員又は代表役員代務者がいない状態が続いた場合、都道府県から解散命令の対象とされますので注意してください。
役員の登記が遅れたときには宗教法人法上の罰則規定が適用されますので注意してください。例えば先代宮司が帰幽し後任宮司はすぐ決まったが登記をしないうちに日時がすぎてしまった場合(宗教法人法上は選任後2週間以内に登記しなければならないことになっています。)、裁判所から過料通知がくるかもしれません。
登記が遅れたことに対する過料は、登記が完了すると法務局から裁判所に通知がいき、それを元に裁判所が判断します。その過程で、個人で申請した場合は多少登記申請が遅くなってもまけてもらえ、司法書士が申請した場合は厳格に判断される、という都市伝説があるようですが、そんなことはないです。
代表役員変更登記申請に添付する書類はどのようなものか その1 規則謄本
宗教法人法上、役員に関する条文は会社法と比べてごく限られたものなので、役員変更手続きの詳細については神社規則の写しをつけるのが実務上の取り扱いとなっております。そこでよく問題になるのが、登記申請に神社本庁の規則の写をつけなければならないか、という点です。
ここからは私の個人的な意見であることをお断りしておきますが、神社本庁の規則の写をつけるか否かは代表役員の任命方法にかかってくるのではないかと思います。
代表役員の決め方は大きく二つのパターンに分かれます。一つは神社が宮司候補者を選定して神社本庁に具申し、神社本庁が候補者を宮司に任命する。そして神社の規則には「当神社の宮司をもって代表役員とする」という記載があるので、宮司すなわち代表役員に就任することになる。というパターンで、いわゆる充当制とよばれている選任方式です。ほとんどすべての神社はこのパターンだと思います。
これに対して「代表役員は宮司にあるものにつき神社本庁統理が任命する」などの規定があり、神社が代表役員候補者を選定して神社本庁に報告し、神社本庁が代表役員に任命する。というパターンで、任命制とよばれている選任方式です。
神社本庁に宗教上の役職である宮司を任命する権限があるというのはわかるのですが、いくら包括宗教法人だからといっても神社本庁に(宗教法人としては別な宗教法人である)他の神社の法律上の役職である代表役員の任命権まではあるのでしょうか?この点についてはやはり法律上の問題を生ずる可能性があるので、神社本庁と神社の規則双方に神社本庁が宮司という宗教上の地位についてだけでなく法律上の地位である代表役員の任命権もある、という記載がなければやはり法務局としても安心できない、と考えることができると思います。
ですから、規則には「当神社の宮司をもって代表役員とする」という記載がある神社については、要するに神社の宮司に任命されたことがわかればよいのだから神社本庁の規則までは要らないと思います。一方、もし規則に「代表役員は宮司にあるものにつき神社本庁統理が任命する」という記載があったら、この神社は役員の登記については神社本庁の規則もつけることになると思います。ほとんどすべての神社は前者だと思います。
全国的にはどのような取り扱いになっているのでしょうか。
代表役員変更登記申請に添付する書類はどのようなものか その2 退任・就任を証する書面
代表役員変更登記申請は前代表役員退任(退任理由は複数あります)と、宮司就任を一件で提出します。添付書類については、正直なところ提出する事案ごとに悩ましい点が出てくるのが実情です。
私が経験した限りにおいて神社本庁所属の宮司が就任の際添付を求められた最多の場合は以下の書類です。
神社本庁の規則の写
宮司免職書
代表役員退任届
代表役員に就任する神社の規則の写
宮司任命書
神社本庁発行の代表役員であることの証明書
代表役員就任承諾書
最小の場合は以下の書類です。
代表役員に就任する神社の規則の写
宮司免職書
神社本庁発行の代表役員であることの証明書
実際にはいろいろな事案があってその都度添付書類は異なってくるのでしょうが、以下に具体例を紹介して少し整理してみたいと思います。なおこの事例は神社本庁に所属する神社の代表役員の退任・就任の事例という限定されたものであることをお断りしておきます。
神社の規則には
第○条 代表役員は、本神社の宮司をもって充てる。
第○条 宮司及び宮司代務者の進退は、代表役員以外の責任役員の具申により、統理が行う。(以下略)
という規定があります。
神社実務上、神社内での手続きは以下のとおり進みます。(登記に関係ない部分は省略します。)
1.現宮司が辞任届を提出。
2.現宮司辞任届を受けて責任役員会を開催し、現宮司の辞任を承認するとともに後任者を選出。
3.後任宮司が宮司就任承諾書を提出。
4.責任役員から現宮司辞任承認書と後任宮司の任命具申書を神社本庁に提出。
5.神社本庁より現宮司の依願免職辞令と後任宮司任命辞令が発出。
以上の流れをふまえ、私が考えた役員変更登記申請の添付情報、登記年月日および登記事項は以下のとおりでした。
1.現宮司辞任届(認印で可)
2.後任宮司の宮司就任承諾書(認印で可)
3.神社本庁発行の現宮司免職辞令
4.神社本庁発行の後任宮司任命辞令
登記年月日および登記事項は
代表役員 何某 免職辞令日 退任
代表役員 何某 任命辞令日 就任
上記のとおりでよいか法務局に照会してみましたところ、以下のとおり回答がありました。
添付情報は以下のとおり。
1.神社本庁発行の現宮司免職辞令
2.神社本庁発行の後任宮司任命辞令
3.後任宮司の代表役員就任承諾書(認印で可)
登記年月日および登記事項はは以下のとおり。
代表役員 何某 免職辞令日 退任
代表役員 何某 就任承諾書日 就任
上記事例はいわゆる充当制をとる被包括宗教法人なので、最終的に宮司を退職・宮司に就任したことがわかればよいので宮司辞任届・宮司就任届は不要、ただし本人の代表役員の就任意思を確認するため代表役員の就任承諾書は必要である、という考え方のようです。では任命制をとる場合はどうでしょうか。包括宗教法人を持つ宗教法人であれば、宮司任命(免職)辞令を代表役員任命(免職)辞令と置き換えればよいと思われます。以上が一番神社本庁所属の神社の実情にあった添付情報になるのではないかと思います。
現在は代表権のある役員の辞任については実印を求めるほど確認が厳しくなっていますから宮司の退任届出であっても添付した方がよいのかな、と思いましたがそこまでは不要でした。逆に宮司任命辞令があれば規則上代表役員であることは明白なので代表役員就任承諾書は不要かなと思いましたが、必要という判断でした。そういえば以前、他の法人で自治体職員が役員に入る法人、いわゆる宛て職役員についても任命書の他に就任承諾書が必要、という事例があったことを思い出しました。
次に私の経験上の話ですが、退任役員について、神社本庁発行の証明書類ではなく宮司辞(退)任届または代表役員辞(退)任届のみを用意されてくる申請人も多くいらっしゃいます。登記手続き上は本人の届出書(実印・印鑑証明又は代表者印を押印)だけでも申請は認められますが、本人の意思確認の他に神社本庁所属の神社であれば神社本庁の手続きを経ているか、という点も確認した方がよいと思います。就任役員については神社本庁所属の神社であれば書類一式がそろっているはずなので問題になることはほとんどないと思います。ただこれも私の経験上の話ですが、登記官の判断により代表役員就任を証する書面としては宮司任命書と神社本庁発行の代表役員証明書の2つを求められる場合があります。
私としてはなるべく必要最小限の書類で、かつ新たな書類作成手数料を生じないように心がけているのですが、実際に申請人がお持ちくださる書類は退任を証する書面一つをとってみても宮司免職辞令、宮司辞任届、代表役員辞任届、等々さまざまですので、いただいた書類を元に添付書類や原因日付を考えていかなければなりません。また法務局としても最終的には申請して添付書類を見てみないと判断できない点もあると思います。結局は提出する法務局の実情に合わせて申請するしかないのが現状だと思いますが、一つの参考事例としていただければ幸いです。
登記申請書に添付する規則は所轄庁発行のものでないといけないか
宗教法人の規則も会社の定款と同じで、必ず事務所備え付けの規則をコピーしなければならないわけではありません。パソコンで作成した規則であっても末尾に代表役員が「これは○○神社の規則である。代表役員○○○○」と証明して代表役員印を押せばそれがその神社の規則とされます。
なお、所轄庁発行あるいは事務所備え付けの規則を使用する場合は内容が最新のものであるか確認する必要があります。例えば最近規則変更をした場合、それが反映されているか確認する必要があります。またパソコンで作成した規則である場合は誤字脱字などを確認する必要があります。
代表役員以外の者が規則写交付申請を申請できるか
代表役員が死亡し後任者が死亡・就任登記しようとしたら規則が見つけられず、所轄庁に交付申請したいのだが交付してもらえるか。
包括宗教法人がある宗教法人の場合は、包括宗教法人から宮司・住職に任命を受けてから交付申請をするのが原則となります。規則がないのに包括宗教法人があるかどうかわからない、ということは通常はないはずです。通常は責任役員などがその辺の事情を知っているはずです。
包括宗教法人がない宗教法人の場合は経験がないので私見ですが同様に責任役員会議事録など代表役員に選任されたことがわかるものを準備してから申請することになると思いますが、所轄庁にご相談いただければ幸いです。
その他の規則を入手する方法としては都道府県神社庁(寺院などでは教区長等)に申請すれば入手することができますが、所轄庁の認証文がればその規則は承継登記などに使用できるので私はなるべく所轄庁に申請するようにしています。 具体的な交付方法は有料無料を含め各所轄庁にお問い合わせください。
代表役員就任登記の際、本人確認情報は必要か
必要ありません。簡単に言えば本人確認情報を添付することになった理由は、株式会社の取締役について、取締役の登記事項には取締役の住所を記載しないため、虚偽の取締役を登記する事例があったため、それを防止するために設けられたものです。そして、法人登記については代表権のある者のみを登記する取り扱いとなっているため、株式会社の取締役にあたる代表権のない平理事なども登記事項となっている一般社団法人など一部の法人を除き、株式会社の規定が準用されないためと考えられます。
代表役員就任登記の際、就任承諾書に実印と印鑑証明書が必要か
必要ありません。つまり就任承諾書は認印でかまいません。株式会社の代表役員同様代表権のある代表役員は辞任届には印鑑証明書が必要というのはわかるのですが、代表役員の就任承諾書には実印が要らないというのは少々奇妙な気がします。単純に法人登記規則に会社法の準用規定がないから、といってしまえばそれが結論となってしまうのですが、代表役員に選任される前の責任役員については登記する規定がなく本人確認情報は当然不要、代表役員就任についても法人登記規則に会社法の準用規定がないから添付不要、というのは正直これでよいのかな?と思ってしまいます。包括宗教法人がある宗教法人であれば登記申請の前に十分本人確認は行っているだろうし、司法書士も申請前に本人確認はするので大丈夫なのでしょうが。ただ、代表役員印鑑届には印鑑証明書をつけなければならないのでどのみち印鑑証明書を添付する必要はありますので、それが救いです。
代表役員辞任登記には辞任届に実印と印鑑証明書が必要か
はい。ただし辞任届に代表役員の法務局届出印を押せば実印と印鑑証明書は要りませんのでこちらの方法の方が簡単だと思います。ただし法務局届出印がわからない時、あるいは印鑑をなくしてしまった時は実印と印鑑証明書をつけるほかありません。従来の辞任届には自筆で署名するか印刷された名前の横に認印を押すだけでしたが、知らない内に他人が勝手に辞任届を作製して役員を変更されてしまうことを防ぐため取扱が変わったと聞いております。
この点については最近法務省から見解が示されており、上記代表役員に選任されたことを証明する書類についての項の応用編で、神社本庁に宮司の任免権があり、神社の規則に「当神社の宮司をもって代表役員とする」という役員の選任方法をとる神社については、神社本庁が宮司を辞任したことを証明する証明書をつければ宮司個人の辞任届については印鑑証明書は不要という見解が示されています。つまり上記2つの添付書類には印鑑証明書と実印は不要ということになります。この点については申請前に法務局に事前相談した方が無難だと思います。まあ代表役員辞任届には代表役員印を押してしまえば一番問題ないのですが。
辞任?退任?
代表役員変更登記は前代表役員の退任(辞任・退任・死亡・解任)と新代表役員の就任登記を1件で申請します。このうち新代表役員の就任登記については登記原因は就任しかありませんが、前代表役員の登記原因については辞任とするか退任とするか、はたまた解任か?迷うときがあります。
一例をあげれば、規則に「宮司をもって代表役員とする」という記載のみがあれば、
例1「宮司を辞任します」という届出書の場合。これは宮司を辞任したことで、規則の規定により代表役員としては退 任。
例2「代表役員を辞任します」という届出書の場合。これは登記原因も辞任とする他ないと思います。
例3「宮司を退任します」という届出書の場合。これは宮司を退任したことで、規則の規定により代表役員としても退 任。
例4「代表役員を退任します」という届出書の場合。これは登記原因も退任とする他ないと思います。
例5「宮司および代表役員を辞任します」という届出書の場合。これは登記原因も辞任とする他ないと思います。
例6「宮司および代表役員を退任します」という届出書の場合。この登記原因は退任の他ないと思います。
ただ、上記のようなややこしいことを考える前に、規則にどのような記載があるかよく確認すればおのずと結論は見えてくるのではないかと思います。ほとんどの神社は(多分お寺も)4つ前の項目で紹介したような、充当制をとり、かつ宗教的な役職の人事権を包括宗教法人が握っている宗教法人ばかりだと思います。こういった宗教法人では宮司選任過程から考えれば代表役員を退任する事由は「退任」しかないはずです。任命制をとる宗教法人であっても代表役員の人事権を包括宗教法人が握っているのであればやはり退任する事由は「退任」しかないと思います。仮に代表役員辞任届とともに「宮司を免ずる」という補任書もつけてしまうと、法務局としては、宮司を免ぜられたのだから退任なのではないか?という疑問をもってしまうかもしれません。この場合最終的には代表役員としての意志を尊重して辞任、となるのでしょうが、特に両者の日付が異なっている場合、包括宗教法人とのトラブルとなってしまう可能性もあります。
包括宗教法人がある宗教法人でどうしても本人の届出書のみで申請したい場合は、原因・日付をよく確認した上で作製するべきだと思います。
こちらも全国的にはどのような取り扱いになっているのでしょうか。
代表役員代務者の退任時期
事情により代表役員代務者(宮司代務者・直階)を置いていた神社について、同一人が資格(権正階)取得により代表役員(宮司)に就任することになりました。神社本庁からの宮司代務者を免ずる辞令には「3月1日付で宮司代務者を免ずる」とあります。一方宮司任命書には「3月8日付で宮司に任命する」とあります。この場合の代表役員代務者の退任年月日は何日になるでしょうか。
宗教法人法上、代表役員・代表役員代務者に任期に関する定めはなく、規則を元に判断するほかありません。そこでその神社の規則を確認してみますと
「(代表役員)代務者は、代務者を置くべき事由が止んだときは、当然退任する」(括弧書き部分は管理人の補記)
という記載がありました。
代務者を置くべき事由が止んだとき、とは上記で言うと3月1日と3月8日のどちらにあたるのでしょうか。下記代表役員代務者か任期の延長かの考え方を応用すると「代表役員を選任し、代表役員が就任した段階で代表役員代務者は退任する」ものと考えられますので、代務者を置くべき事由が止んだとき、とは代表役員が就任したとき、つまり代表役員代務者としての退任の日は3月8日となります。
登記申請時の添付書類としては代表役員代務者も代表役員も同一人ですので、後任宮司の就任関係書類のみ添付すればよいと思われますが、法務局から本人の意思確認の意味で3月8日付の代表役員代務者退任届を提出を求められる可能性はありますので、あらかじめ用意しておいた方が間違いないと思います。代表役員代務者退任届に押す印鑑は上記代表役員辞任登記には辞任届に実印と印鑑証明書が必要かから判断すると神社本庁の宮司代務者を免ずる証明書をつければ認印でよいはずですが、代表役員代務者登録印を押印すれば一番間違いないと思います。
上記事例はあくまで一事案ですので、規則にどのような記載があるか確認した上で慎重に判断し、場合によっては法務局の判断を仰いだほうがよいと思います。
規則写は抄本でもよいか
登記の先例では株式会社については謄本を添付することとされていますから、規則謄本をつけるのが原則だと思います。現実には「所属神社庁から渡されました」といって規則抄本を持ってこられる宮司さんもいらっしゃいますので、抄本でも認められているようです。自分としては記載全体を確認するのが原則だと思いますので、申請時には謄本をつけて申請しています。もちろん提出先で現在抄本でよいと判断されている場合、わざわざ「謄本でないとだめなのではありませんか?」と目くじらを立てたこともありませんが。
結婚前の旧姓を登記したい
神社関係者の方でこの登記をする人はいないのではないかは思うのですが一応紹介しておきます。
この登記ができるのは基本的に代表役員に就任したときか結婚によって氏が変わるときだけです(平成27年8月26日までであれば既に登記されている人でも旧姓を付け加える申出ができました。)。登記申請の際に旧姓がわかるもの、具体的には戸籍謄本等をつけて申請書に旧姓を使用する役員の氏名と旧姓を記載して申請すれば氏名とともに括弧書きで旧姓が記載されます。始まったばかりの制度なので実際に登記申請される際は司法書士か法務局に相談されることをおすすめします。
代表役員の住所が変わったら
会社勤めなど兼業をしながら神職をしている場合、転勤などにより住所が変わる場合があります。この場合代表役員本人の住所を変更する登記を申請しなければなりません。この登記は申請書だけを提出すればよく、住所変更を証明する書類は必要ありません。ただし申請書のとおり住所が登記されてしまいますので申請書に間違った住所を記載しないように注意してください。
代表役員の住所は外国でもよいか
平成27年3月からは会社の代表取締役の住所も「国内縛り」が無くなったと聞いております。このことからすれば宗教法人法上代表役員の住所地については法律上何の制限もありませんので、仮に日本の神社の代表役員の住所がハワイやサンパウロでも登記は可能なはずです。ただ全国的にそのような例はまだないようなので、もしそのような事態が起きたときは管轄法務局に事前に照会した方が安全です。
代表役員代務者か任期の延長か
宗教法人法上、代表役員が死亡又は3か月以上その職務を行うことができないときは代務者を置かなければなりません。一方で、規則に「代表役員は任期満了後も後任者が就任するまではなお職務を行う」という規定がある時もあります。この場合前任宮司が任期切れとなったが何か事故があってなかなか後任宮司が決まらなかった場合、登記の上では速やかに代表役員代務者を選任しなければならなののでしょうか?それとも前代表役員が引き続き代表役員とみなされ役員としての責任を負うことになるのでしょうか?
法務省の見解では、この場合「任期満了後も後任者が就任するまではなお職務を行う」の「後任者」には代表役員代務者も含まれると解釈され、代表役員代務者を選任し、代表役員代務者が就任した段階で従前の代表役員は退任するもの、とされています。ですから代表役員を退任したとしても後任者が就任するまではなお代表役員としての責務を負うことになります。
代表役員代務者を省略して代表役員就任登記は可能か
事実を忠実に登記するのが登記の大原則なので、議事録などから代表役員代務者を選任したことがわかるとき、代表役員代務者変更登記を省略することはできません。
代表役員代務者を2名登記できるか
できません。代務者であっても代表役員同様1名だけなので前任者を抹消する登記も合わせて行うことになります。
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