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神社の登記小資料室 熊谷司法書士事務所

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〒995-0112 山形県村山市大字湯野沢2884番地

設立・名称・主たる事務所などあれこれ

 自分が登記申請したり相談を受けた事例を紹介します。あらかじめおことわりさせていただきますが、あくまで自分が体験した事例なので、法務局の見解と異なる場合がありますことをご承知置きください。


登記上神社の名称に「宗教法人」は付くのか

 通常神社の名称は「○○神社」です。神社の規則をご覧になれば
 第1条 この神社は、宗教法人法による宗教法人であって、「○○神社」といふ。
と記載されているはずです。「宗教法人○○神社」といふ。ではなくて「○○神社」といふ、ですから登記上の名称は○○神社です。株式会社は会社法上、会社名に株式会社の文字を使わなければならないことになっていますが、宗教法人は宗教法人法上宗教法人の名称に宗教法人の文字を入れる規定はありません。このため登記上は例えば住所の違う八幡神社がたくさん登記されているわけです。
 ではなぜ「○○神社」が「宗教法人○○神社」となってしまったかというと、私の経験した限りにおいては、登記簿がバインダー式帳簿の登記簿であった時代、変更登記を申請する際に名称・役員欄の記載を誤った例がほとんどです。当時はたとえば役員全員について変更登記をする際、申請人が新しい登記用紙に変更後の登記事項を記入して登記申請書と一緒に提出し、それが変更前の登記用紙と差し替えられて新しい登記簿となっていました。その登記用紙に記入する際に誤って神社の名称を「宗教法人○○神社」と記入してしまい、それがそのまま登記簿になってしまったという例がほとんどです。主たる事務所の所在についても同じ原因で誤っている場合があります。法務局側で見過ごしたということもありますが、申請人側の誤りでもありますので、必要なときは名称更正の登記申請をする他ないと思います。


上記事例について名称・主たる事務所更正登記の添付書類は?

 上記の事例で更正登記を申請する際、錯誤を証する書面としてはどのような書類が考えられるでしょうか?主たる事務所を誤っている場合を例に考えてみます。
 法務局に申請書が残っている場合職権更正してもらえないか相談してみる価値はあると思いますが、申請書がない場合、まず閉鎖登記簿謄本・閉鎖登記事項証明書をとって主たる事務所の記載の前後関係を確認し、主たる事務所移転に関する記載が全くなければ、住所の記載に何らかの誤りがあったのではないかということが推測できます。次に所轄庁保管の神社規則謄本をとって主たる事務所の記載を確認し、主たる事務所の記載が登記上の記載を誤る前の住所と一致することを確認します。宗教法人規則中、主たる事務所を変更するには所轄庁の認可が必要ですから、規則の記載から当該宗教法人は主たる事務所移転の認可申請を出していない=主たる事務所を移転していないことが推測できます。推測ではありますが、この2つの事実から考えれば変更登記申請時の記載誤りであると判断することは十分可能なはずです。これに代表役員から「上記の住所は○○変更登記申請時の誤りで登記上の住所に主たる事務所を移転した事実はない」といった内容の上申書を出してもらい、添付書類を補強します。
 本当は規則の記載から推測するのではなく、所轄庁から「登記記載事項と同じ名称(所在)の規則の備付がない」ことの証明書、包括宗教法人から「当法人台帳に登記記載事項と同じ名称(所在)の宗教法人がない」ことの証明書を発行してもらえればよいのですが、所轄庁からは「現在存在する書類についての証明は出せるが、ないことの証明書は出せない。」包括宗教法人からは「どうしても必要ならば都道府県単位の包括宗教法人(都道府県神社庁長名)での証明書は出せるが法務局で包括宗教法人(神社本庁)の証明書でないと認められない可能性があります。」という回答があり、添付できませんでした。
 名称を誤っている場合も同様に考えてよいと思います。役員に関する更正登記は通常の役員変更・更正登記と同じです。


主たる事務所の移転・変更

 神社が主たる事務所を移転する例として、過疎により集落が集団移転することになり氏神様もいっしょに御動座される場合や区画整理などにより新しい割当地に神社を移転・新築する場合があります。このような場合まず確認しなければならないのは神社の敷地が神社名義になっているか、という点です。神社名義でない場合は神社が将来にわたって存立を脅かされないようにするため、神社敷地所有者から
「今後永代にわたって神社敷地として使用してよい」
「もし神社敷地が道路拡幅などにより用地買収にかかるときは必ず神社の許可を得る」
「上記2つの確認事項は所有権を移転したとしても新しい所有者に必ず引き継ぐ」
という内容の承諾書・念書が必要となります。でないと神社庁から移転許可はおりません。しかしながらこういった承諾書・念書は土地所有者が作成に同意するかどうかは交渉してみないとわかりません。後々のトラブルを防ぐという点からすれば神社境内地は神社名義にしておくのが原則だと思います。
 事業の流れとしてはまず上記のとおり敷地を確保した上で神社庁に境内地模様替え(鎮座値の移転)許可・建物変更承認(社殿の解体移転・解体新築)・規則承認願を提出し許可を得ます。次に所轄庁に規則変更届を提出し認可を得ます。
その後で登記申請を行い登記が完了したら神社庁と所轄庁に変更手続完了届を提出します。
 一方、神社を物理的に移転するのではなく、神社の所在地は変わらないけれども町村合併や住居表示により神社の所在地の名称が変わる、ということはままあることだと思います。町村合併により住所が変わった時は登記上も読替規定が働きますので登記手続は不要なのですが、神社庁への届け出の必要から登記する場合が多いようです。住居表示実施、土地区画整理の場合は変更証明書を添付して登記申請をすることになります。


昭和23年に神社を設立することはできたのか

 神社名義の不動産について登記することになり法人登記を遡っていったら法人閉鎖登記簿に「昭和23年○月○日設立」というような記載があった。神社は通常昭和22年か昭和26〜28年の設立(承継)なのだが。という質問です。宗教法人令によれば昭和23年に神社設立登記をすることは可能です。実際、信教の自由が完全に保証されるようになった昭和23年当時怪しげな宗教法人が乱立したということは聞いておりますが、現実に戦後まもなく設立された神社というのはほとんど見たことがありません。可能性として考えられるのは昭和22年に解散扱いとなった神社について昭和23年に実態は同じ神社を新たに設立した場合と、単純に登記するときに年月日の記載を誤った場合が考えられます。後者の場合問題はあまりないと思いますが、前者の場合は「神社名義の不動産」が戦前の昭和22年に解散した神社の所有なのか、昭和23年に設立した神社なのかによって登記の仕方が全然違ってくるので、いずれの場合も神社の登記簿を遡れるだけ遡り、神社の規則の認証年月日などをよく調査する必要があります。ちなみに相談の神社は単純な年月日の記載誤りのようでした。


代表役員代務者を最初の役員として登記できるか

 登記先例通達をごらんになればわかるとおり、代務者をもって設立登記することはできません。


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